アレルギー治療の種類

(1)抗ヒスタミン薬

 ヒスタミンの作用を抑制することでアレルギー症状を緩和するお薬です。アレルギー疾患の治療の中核を担います。第一世代と第二世代があり、近年では眠気などの副作用が緩和された第二世代を用いることが主流となっています。薬の効き目には個人差が大きく、色々試してご自身に合った薬を見つけることが大切です。また眠気などの副作用の観点から自動車の運転が制限される薬があるので注意が必要です。添付文書において自動車運転の注意喚起がされているお薬はタリオン®(ベポタスチンベシル)、アレジオン®(エピナスチン)、エバステル®(エバスチン)、運転が制限されている薬剤はルパフィン®(ルパダジン)、ザイザル®(レボセチリジン)、ジルテック®(セチリジン)、アレロック®(オロパタジン)などがあります。詳しくは主治医までご相談ください。
 抗ヒスタミン薬は毎日継続して服用し続けることがとても大切です。お薬によって一日の内服回数が異なるため、ご自身が継続しやすいよう薬剤の選択を医師と良くご相談することをお勧めします。

(2)ヒスタグロビン注射

 非特異的減感作療法と言われる治療です。特定のアレルギー物質に対して感受性を低下させる特異的減感作療法とは異なり、全てのアレルギー物質に効果のある治療法です。肥満細胞からのヒスタミンの過剰な分泌を抑え、好酸球の局所浸潤を抑えることでアレルギー症状を緩和します。抗ヒスタミン薬を続けても症状がなかなか改善しない花粉症や各種アレルギー、気管支喘息に対して薦められる治療法です。またアレルギー体質の改善も期待できます。
 注射は成人では週に1~2回、小児では週1回の間隔で計6回注射を行います。これにより3~4か月の間アレルギー症状を抑えることが可能です。十分な効果が表れない場合には追加で投与を行います。効果は緩徐に現れるため、花粉症では症状が出現する前に治療を開始することをお勧めします。
 保険適応の治療です。当院では注射薬を常備していますので治療希望の方はいつでもお問い合わせください。

(3)ゾレア®皮下注射

 2020年に重症のスギ花粉症に対して新たに認可されたお薬です。元々は重症な気管支喘息に対して使用されていました。ゾレア®(抗IgE抗体)を体内に投与することで、スギ花粉に結合するIgEを無力化しアレルギー反応自体を起こさせないようにするお薬です。そのため効果は非常に高いです。ただし使用には以下のような条件があります。
・年齢12歳以上
・従来治療で1週間以上治療したにも関わらずアレルギー症状が改善しない
・血液検査で総IgE値が一定値以下(30~1500IU/mL)
・スギ特異的IgE抗体がclass3以上(重度のスギ花粉症)
 治療は保険適応となります。体格と血液検査の結果により投与する薬の量が変わりますが、3割負担で注射代だけで約4,000円~70,000円かかります。価格が高額なためなかなか治療に踏み出せないかもしれませんが、例えば受験や挙式など重要なライフイベントの際には検討してみても良いのかもしれません。

(4)減感作療法

 アレルギーの原因物質の抗原を抽出したお薬を体内に少しずつ取り込み、アレルギー症状の起こりにくい体質へと変えていく治療です。現時点でアレルギーの根本的治療はこの特異的減感作療法のみです。
 お薬は注射と舌下錠があります。対応できるアレルゲンはスギ、ダニ、ハウスダストです。治療は3年以上継続する必要があります。重度の喘息がある方や癌、免疫不全のある患者さんへの治療は行えません。まれに重度のアレルギー反応を起こす場合があるため注射や初回の舌下錠内服時後は院内で状態を観察する必要があります。